別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
凛はすっかりその気だ。


「ほんと。先生、忙しいと遅くなっちゃうときもあるけど、いいかな?」
「いいよ!ママと一緒に待ってる」
「ありがと」


うれしそうな凛を前にして、これ以上拒否できない。
一旦別の部屋に行った彼から鍵を預かってしまった。

ここを去ったあの日、ポストに入れていった鍵が再び手元に戻ってくるとは思わなかった。



それから陸人さんは私と凛をアパートまで車で送り届けてくれた。

大きなくまを抱える凛は、車を降りてきた陸人さんに「先生またね!」と大きな声で挨拶をしている。

もし彼が父親だと明かしたら、凛はどんな反応をするのだろう。


「凛ちゃん、またね」


腰を折り、凛に挨拶をした陸人さんは次に私と目を合わせた。


「諸々連絡するよ。それまで凛ちゃんをお願いできる?」
「はい、もちろん」


『お願いできる?』なんて言われるとは。
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