別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
凛の存在を完全に受け入れてくれているのだと伝わってくる。


「背中の傷は痛まない?」
「……大丈夫です」


本当は疲れると鈍痛が走る。

でも、凛を抱えてギリギリの生活をしていると、痛くてつらいなどと泣き言を言ってはいられない。


「痛いんだね。少し落ち着いたら、心春の傷の治療もさせてほしい」


言い淀んだからか、痛むことに気づかれてしまった。


「ありがとうございます。凛だけで十分――」

「俺は医者だよ。目の前に苦しんでいる患者がいるのに放ってはおけない」

「先生、ママのケガも治せるの?」


私たちの会話が聞こえたらしい凛が口を挟む。


「うん。お母さんが痛いの嫌だよね」
「嫌! 我慢してるのかわいそうだもん」


凛の前ではできるだけ平気な顔をしているつもりだったのに、気づいてたの?
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