別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
三十二階にある部屋の前に着いたタイミングでドアが開き、口の前に人差し指を立たせた陸人さんが「しーっ」と言う。


「さっき疲れて寝ちゃった。公園連れていったらはしゃいじゃって。入って」


招き入れられてリビングに向かうと、絵本やおもちゃが散乱していた。


「ごめんなさい。公園まで連れていってもらって、こんな……」


おもちゃも用意してくれたのだろう。


「いや、育児って大変だな。あんな小さいのにいくらでも走り回れるんだから。久しぶりの滑り台、楽しかったよ」


楽しそうに語る彼にホッとした。

たしかに一日凛に付き合うとこちらがぐったりするのだが、特に迷惑がってはいないようだ。


「おてんばですよね」


散らばったおもちゃを片づけながら問う。


「うん。意外だった。心春はおとなしかったからな。誰に似たんだろ。俺も引っ込み思案だったんだよ」


陸人さんが?
そんなふうには見えないのに。


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