別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
私が問いかけると、凛は大きくうなずいている。


「うーん、複雑だな。嫁にはやりたくない」


陸人さんがボソッとつぶやくので噴き出した。男親の葛藤なのだろう。


「でも、先生も小さい頃、結婚の約束したんだよ」
「ほんとに?」


凛が陸人さんの腕を引き尋ねると、彼は凛を抱き上げる。


「うん。それで、その人と結婚しようと思ってる。凛ちゃんも叶うといいね」
「うん!」


笑顔のふたりがまぶしい。


凛はその相手が私だとは気づいていないだろうけど、こうして仲を深めていけば理解してくれるかもしれないと思える、幸福なひとときだった。

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