別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
その点、すっと凛の懐に入った陸人さんはすごいんだなと感じた。


「まったく。凛ちゃん、絵本買ってきたぞ」
「ほんと?」
「字がたくさん読めるんだって? すごいな、陸人に似たのか?」
「お兄ちゃん!」


まだ父親だと名乗っていないのだから、余計な発言は控えてよ。

目配せすると、しまったという顔をしている。


「ごめんごめん。乗って」


凛はもらった絵本に夢中でなにも気づいていない様子だ。
ホッと胸を撫で下ろして兄の車に乗り込んだ。



車で一時間と少し。
住宅街の一角にある一軒家の我が家は、以前と変わっていない。


「ママ、ここどこ?」


ずっと絵本に夢中になっていた凛は、車を降りて首を傾げた。


「おじいちゃんとおばあちゃんのおうち。凛、ご挨拶できるかな?」


昨晩話したのだが、遊びに夢中で耳に入っていなかったようだ。


「おじいちゃん?」
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