別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
「うん。凛のおじいちゃんとおばあちゃん。凛に会いたくて待ってるの」


きょとんとしている彼女は、陸人さんを皮切りにたくさんの人に次々と会わされてびっくりしているのかもしれない。


「そっか。じゃあ行こー」


人見知りしない彼女らしい。
あっさりした様子に、「お前と全然違うな」と兄が笑っていた。

絵本を抱えたまま私と手をつなぐ凛は、ためらいもせず足を進める。

一方私は、緊張でのどがカラカラだった。

陸人さんは、『全部話してあるからただ行くだけでいい』と言っていたけれど、そういうわけにもいかない。


兄が先陣を切って入っていくと、すぐに母が顔を出した。
そして私を見て顔をゆがめる。


「心春……」
「お母さん、心配かけてごめんなさい」
「うん。陸人くんから聞いてる。でも、ひとりで全部背負わなくても」


涙声で言われて、胸に迫るものがある。


「ごめんなさい」
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