別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
「はじめまして。おばあちゃんです」


次に母は凛の顔を覗き込み、笑顔で声をかけた。


「本宮凛です。三歳!」


三本指を立てた凛の力んだ挨拶に笑みがこぼれる。

いつの間にかこんなふうに自己紹介ができるほどしっかりしたんだなとほっこりした。


「上手に挨拶できるのね。凛ちゃん、ちょっと……ギュッとしていいかな」


うっすら涙を浮かべる母が凛に問うのを聞き、私まで泣きそうになる。

孫を抱ける日がこんなに遅くなってしまって申し訳ない。


「いいよ」
「ありがと」


母は顔をくしゃくしゃにゆがめながら、凛を抱きしめた。

結果的に私は、ふたりがこうして触れ合う時間まで奪ってしまったのだろうか。

陸人さんの幸せを邪魔してはならないと思い詰めた末の行動だったが、罪悪感も募る。


「上がって。ケーキ好き?」
「好き!」


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