別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
しかし、ときすでに遅し。

無防備に眠る陸人さんの体にドンと遠慮なしに乗った彼女は、「うぉっ」と変な声を出して目覚めた陸人さんを見てご満悦だ。

夜勤明けで十時過ぎにようやく帰ってきた彼は、また今晩も夜勤だ。
もう少し寝かせてあげたかったのに。


「公園!」


たしかに、そんな約束はしていたけれど、さすがにハードすぎる。


「凛、ママと一緒に行こう」
「ダーメ。先生とボール!」


凛は結婚したあとも陸人さんを〝先生〟と呼んでいるが、そこはあえて訂正しないようにしている。

いつか〝パパ〟と呼んでもらえるようにもっと頑張ると、彼は前向きだ。


「そうだったね、ごめん」


病院での凛々しい姿は鳴りをひそめ、寝ぼけ眼であくびをする陸人さんの姿は貴重だ。


「まだ寝ててください。凛、行こう」


座ったままでも寝られるという彼だけど、やはり心配だ。

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