別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
絵麻は、私が背中に傷を負い入院していたときに病院で知り合った同じ歳の友達だ。

彼女は階段から転げ落ちて複雑骨折をしたため入院していて、私が大部屋に移ったときに隣のベッドにいたのだ。

痛くて眠れない日々を同じように経験したからか、すぐに打ち解け、その関係が今までずっと続いている。


電車を乗り継いで三十分。
駅までは絵麻が車で迎えに来てくれた。


「心春、久しぶり」
「うん。元気そうだね」


彼女の弾けた笑みを見ると、私も口角が上がる。


「ピザ買ってきた。家で食べよ」
「ありがと。お邪魔する」


彼女と会うときは、こうしてどちらかの家でおしゃべりをすることが多い。

旦那さまとの新居は、立派な一軒家。
一流企業で働いている旦那さまは優しくて、思いやりがある人だ。

そういえば雰囲気が天沢さんに似ている――なんて、天沢さんの顔がよぎってしまい、打ち消した。


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