マリアの心臓






――おれさ、こんななりして昔は、引きこもりだったんだ。





何かとよく泣く子だった。


それこそ、産まれたときは、病院中を震撼させる産声を上げたらしい。

はじめはそれが元気の印だったが、大きくなるにつれ、ひどくちゃちなレッテルへと成り果てていった。



元気だけど、元気じゃなかった。

体の水分を目から噴射させるたび、体内にバイ菌が入っていくようだった。



学校に行けなくなった。


勉強はきらいじゃない。
けど、学校が得意じゃない。

友だちはいる。
けど、あまり信じられない。


太陽よりも月の下のほうがうまく歩ける。

そういうビョーキに、侵されていたんだと思う。



こんなおれなんかを好きになってくれる子がいたら、奇跡であり、迷宮入りの謎だ。いっそ怖いくらい。

……でもやっぱり舞い上がって、簡単にときめいてしまうんだろう。



だって、わからないんだ。


自分のことを、どうしたら好きになれる?

他人のことを、どうしたら理解できる?



泣くことでしか、感情を吐き出す方法がわからないのに。


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