マリアの心臓
●
――おれさ、こんななりして昔は、引きこもりだったんだ。
何かとよく泣く子だった。
それこそ、産まれたときは、病院中を震撼させる産声を上げたらしい。
はじめはそれが元気の印だったが、大きくなるにつれ、ひどくちゃちなレッテルへと成り果てていった。
元気だけど、元気じゃなかった。
体の水分を目から噴射させるたび、体内にバイ菌が入っていくようだった。
学校に行けなくなった。
勉強はきらいじゃない。
けど、学校が得意じゃない。
友だちはいる。
けど、あまり信じられない。
太陽よりも月の下のほうがうまく歩ける。
そういうビョーキに、侵されていたんだと思う。
こんなおれなんかを好きになってくれる子がいたら、奇跡であり、迷宮入りの謎だ。いっそ怖いくらい。
……でもやっぱり舞い上がって、簡単にときめいてしまうんだろう。
だって、わからないんだ。
自分のことを、どうしたら好きになれる?
他人のことを、どうしたら理解できる?
泣くことでしか、感情を吐き出す方法がわからないのに。