マリアの心臓
その透けるような頬は、少しかさついていて。
雨を乞うように痩せ、くすみ、……けれどずっと太陽を仰いでいる。
泣き虫な自分とは、正反対。
弱くてごめんと、何度もえぐってきた心も。
こんなにもちがう。
なのに。
どうして、あの子は。
この愚かな涙さえ、慈しんでくれるんだろう。
特別なのだと、自惚れてしまいそう。
きみは、泣かないの?
……泣けないの?
おれの涙をあげられたらいいのに。
『その涙は、心がきれいな証拠だね』
『……っ』
いつしか、少女を想って、泣いていた。
『ど、どうして……』
どうして、そんなにやさしくしてくれるの。
『ん? どうしてここにいるのかって?』
『い、いや、』
『ちょっとね、逃げてきちゃった』
『……に、げる?』
逃げるって、何?
何から? ……誰から?
『でも、もう時間切れかも』
少女が悲しげにうつむいた。
刹那。
バンッ!!
頑丈な扉が、力強く開かれた。
汗だくの男が、屋上に踏み入れた。
『……やぁっと見つけた』
『……お、お父さん……』