マリアの心臓
すぐにわかった。
それが、隣の病室で眠る、ツインテールのあの子への切なる願いだと。
送り主の名前はどこにもなくて。
ただ、その一文の真下に、何かが黒く塗りつぶされていた。
太陽の光に透かしてみると。
かすかにうっすらと文字が浮かび上がった。
衛――その漢字、一文字が。
「もしかして、おまえ、あの、紙を……」
やっぱり。
あの手紙の送り主は、あなただったんだね。
水附衛……エイちゃん。
「死なないよ」
「……っ」
「生き続けるよ」
怖がらないで。
あなたの想いは、空を飛んで、ちゃんとここに届いたよ。
一方通行なんかじゃなかったよ。
「だから、あなたも、ここまでのぼってきて?」
「……のぼ、る……?」
「むずかしくても、苦しくても、痛くても……待ってるから、ずっと」
背伸びをして、額をくっつける。
お互い、ちょっと冷たい。
でも大丈夫、重なれば温もりをわかち合える。
「それまで、アタシが、あなたの想いも、傷も、愛してあげる」
アタシが。
――“あたし”が。
守ってみせる、ふたりのすべて。
きらいだと嘆くこの世界が、ほんの少しでも、いとおしくなるように。
「……バカ、だな、ほんと」
「うん」
「無茶なことばっか言いやがって」
「うん、ごめんね」
「ずりぃよ……。オレが、どんな思いで……っ」
「うん、ありがとう」
「……っ、ま、りあ」
「うん」
「生きろよ、ぜったい」
「……うん、約束」
一緒に、叶えてあげよう?
幸せになろう?
そして、アタシに、永遠を教えてよ。