マリアの心臓






「はいこれ携帯。ウノくんのだよね?」

「おお! サンキューな!」




ひと波乱のあと。

路地裏を通り抜けた先の小道で、本来の目的である忘れ物を無事に届けた。



路地のほうでは、不審者らしき男性数名とエイちゃんら神亀が戦った痕跡が、ありありと点在している。

ここからじゃ、痕跡は、伸びてる足くらいしか見えないけれど。


エイちゃんに危ないからと、ここに一時避難するよう案内されてから、10分もしないうちにこの有様になった。

今、エイちゃんが痕跡の後片付けをしているらしい。




「携帯は助かったけどさ、衛の言ってたとおり、今後二度と危ない橋を渡るんじゃねえぞ?」




うっ。耳が痛い……。
エイちゃんにもこっぴどく注意された。


待ってるって言うなら、ちゃんと安全な場所で待ってろ、と。


そんなこと言われちゃったら、わがままできない。

うなずくしかないじゃんね。




「ま、おかげで、今日の衛、キレッキレだったけどな」

「そうなの?」

「ああ、やべえよ? 一撃の威力がハンパねぇの!」

「ほへ〜……」




脳内に、古いタイプの格闘ゲームの対戦画面が構築される。

クリティカルヒット連発で、即KO。


それですぐに決着がついて、静かになったのかな。




「なんか吹っ切れたみてぇに活き活きしててさ。まじかっこよかった」




そんなにかっこよかったなら、ちょこっと盗み見すればよかったかも。なんてね。また注意されちゃうな。

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