マリアの心臓
病院の敷地内にある庭園に、咲きほこるピンクの花を、一輪受け取った。
家に帰ったら、花瓶に入れよう。
部屋の一番日当たりのいいところに飾ろう。
そして最後は押し花にして、常に持ち歩くんだ。
ボクたちは誰よりも幸せなんだと、世界中に自慢してやる!
『おとうさんとおかあさんにも、ぷれぜんとしたかったなあ……』
親子のように付き添う色違いの花々を、マリアはしょんぼりとしながら眺める。
いつもそうだ。
自分が一番つらいはずなのに、いつだって、誰かのことを想ってる。
『ふたりとも、しごとだから』
『……うん、わかってる。アタシのためだもんね』
ボクんちは、けっして裕福じゃない。
むしろ貧乏に含まれる部類なんだろう。
入院や手術などの費用を稼ぐために、両親は毎日あくせく働いている。
それでも金は足りず、借金までしている。
マリアには話したことがない事情だけれど、薄々察していたんだろう。
だから、めったにわがままを言わない。
泣き顔を最後に見たのは、いつだっけ……?
『会いたい? ボクがつれてこようか?』
『ううん! おにいちゃんがいてくれるから、しあわせ!』
……言わせてしまっているんだろうな。
本音だったとしても、さびしい気持ちも嘘じゃないはずだ。