マリアの心臓
まだ小学生に上がったばかりのボクじゃ、何の役にも立てない。
悔しい。
ボクは、妹に、何をしてあげられるだろう。
『マリア!』
『どうしたの、おにいちゃん?』
『兄ちゃんがもっともーっと! マリアのこと幸せにしてやるからな!』
会いたいって言ったらすぐに飛んでくる。
言わなくても、会いに来るよ。
苦しいときは、一日中、手を握っていてあげる。
手術する前夜は、朝が来るまで一緒に寝てあげるよ。
ボクには、どんなわがままを言ってもいいんだよ。
『いっしょう、まもってやる!』
マリアのことが、大好きだから。
『いっしょう……? いっしょうって、ずっと……?』
『そう、ずっとずーっと!』
『でも……アタシは……』
『だいじょーぶ! 兄ちゃん、つよいから。神さまにも勝っちゃうよ!』
ふわりと、マリアはほころんだ。
庭園のどの花よりも、きれいで、儚くて。
わけもなく、泣きそうになる。
『ほら、やくそく』
『えへへ! やくそく!』
隙間なく小指をつなぎ合わせる。
ドキドキと脈を打つ。
永遠を懸けたおまじないに、どうしようもなくすがっていた。