マリアの心臓



父さんのような不出来なオトナを、狩ってはあぶり、依頼されては必要以上にえぐり続けた。

そうしていくうちに、神亀の副総長にまでなった。



なんの意味もない日々が、淡々と過ぎていった。



――そんなとき、母さんの再婚が決まった。




『はじめまして、り、鈴子です』

『鈴夏、あなたの新しい義妹よ』

『……イモウト……』




ボクに、また、イモウトができた。


銀行員だという再婚相手の義父に連れられた少女は、マリアとは似ても似つかない、フツウの子だった。

心臓が、ざわついた。



あぁ……きっと、これは。

チャンスなのだ。


マリアがくれた、罪を償う、最後のチャンス。



愛さなくちゃ。
幸せにならなくちゃ。

……ぜったい、生きていかなくちゃ。




『はじめまして。ボクのことは気軽に鈴夏って呼んでいいよ』

『お兄ちゃんじゃなくて……?』

『……うん。そっちのほうが、きみも呼びやすいだろ?』

『は、はい……。ありがとう、鈴夏、さん』




やり直すんだ。

はじめから、全部。




『これからよろしく』




いつの日か、ボクも、天国に行けるように。



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