マリアの心臓
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ボクの愛が、神さまにも届いたのだろうか。
だから、こんな奇跡をくれたのだろうか。
あぁ、マリア。
ボクの、マリア。
やっと、会えた。
――同じ名前の、優木まりあの身体となって。
まさかと思った。
信じられなかった。
でも……信じたかった。
マリアのことを忘れた日はなかった。
会いたかった。
会えないのがつらかった。
その想いが、ボクを生かしてくれた。
まさか、と思って生まれた既視感を、放り捨てる愚行などできるわけがなかった。
『神さまにも、勝てちゃうんでしょう?』
『それまで、アタシが、あなたの想いも、傷も、愛してあげる』
健気な言葉。
無邪気な笑顔。
真っ直ぐな愛。
そのひとつひとつが、心臓の奥の奥、大事に鍵をかけてしまっていたヒミツを、やさしくノックした。
なつかしい心音が、よみがえる。
熱の高まるほうへ、鍵を開けて走って迎えに行った。
ボクの心は、ずっと、ずっと昔から、マリアのものだった。