マリアの心臓


おろおろとしていれば、トン、と彼女に肩を押された。

ふらついた体を、ちょうどいい位置にいたエイちゃんが片腕でキャッチする。




「衛さま。そのおかしな子、さっさと連れてって」

「……いいのか?」

「よくないです! だって、まだ……」




劇、まだ終わってないよ!?




「もういいって言ったでしょ」

「そ、それは、どういう……?」

「わたしの負けよ」

「ま、負け……?」




やっぱりどっちの返事なのか、わからない!


でも……。

彼女の表情は、すっかり毒気が抜けていて。

ハッピーエンドだと、信じたくなった。


劇を終幕するなら、アタシも帰らなくちゃ。




「え、えっと……あ、ありがとうございました!」

「……ありがとう? ……ほんと、おかしな子」

「騎士さまたちも! 楽しかったです!」

「うっ……かわいすぎる……!」

「あの笑顔、守りたい……!」

「本来の目的、何だったっけ?」

「もう何だっていいさ! あの子が笑ってんなら!」




男の子たち、胸を押さえてるけど大丈夫かな? はしゃいでるから元気そう……?


エイちゃんに視線で急かされながらも、最後の最後まで大きく手を振り、別れを惜しんだ。

本当に最後のほうに、一瞬だけ、ポニーテールの女の子が手を振り返してくれた。


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