マリアの心臓
気絶したあたしが、次に目を覚ましたのは、真っ白な部屋。
また。
いつも、この繰り返し。
「お願いよ……! もう無理しないで」
「ドナーが見つかるまで、ここで待ってよう? な?」
この街一番の、津上総合病院。
その一番大きな個室に、嗚咽が響く。
ぽろぽろと両親が涙を流している。
良質なベッドに横になるあたしを抱きしめて。
濡れた髪は、すっかり乾いていた。
あたしはけっして悪い女ではないけれど。
悪い娘では、あるかもしれない。
「ごめんね。でも……このままじゃいや。あたし、最後は、彼と一緒って決めてるの」
胸が痛い。
でもこの痛みは、罪悪感のせいだけじゃない。
すべては、このちっぽけな心臓が悪いのだ。
「また、会いに行かなくちゃ」
「だめよ! まだ身体が安定してないのに!」
「今は寝ていなさい!」
起き上がろうとするあたしを、両親は切実に止めにかかる。
あたしの目にも涙がこみあげた。
「だって……今、会わないと、会えなくなっちゃうもん……っ」
長い間、入退院を繰り返し、とうにこの身体はボロボロで、いつどうなってもおかしくない。
両親の気持ちも、わかってる。わかってるよ!
でも……。
だからこそ……!
お願い。わがままを許して。
学校に行っても、ろくに授業に出席できなくても。
名も知らぬ人たちから、いやがらせを受けても。
この愛を、信じたいの。