マリアの心臓
「鈴夏センパイは、“センパイ”って感じがかっこよくて軽率に惚れちゃうし」
「羽乃くんは、カノジョよく替えるけどかっこいいから許せちゃうし」
「衛さまは……はあ、かっこよすぎて……毎日誕生日にしてお祝いしてさしあげたい……」
「……てかさ、うちら、誰に神亀のプレゼンしてんの?」
「え?」
「あ、そういえば」
「――あの! 教えてくれてありがとうございます!」
「え? ……ぅええ!?」
「あ、悪女の……!?」
「は!? いつの間に!?」
アタシは会釈をして、先に校舎へと向かう。
謎がひとつ解けたことがうれしくて、女の子たちが口をあんぐりと開けてフリーズしていることは知るよしもなかった。
校舎前に、男の子の集団がぞろぞろとゆっくり歩いている。
よくよく目を凝らしてみると……あれ? 全員、見覚えがある!
昨日の、劇の、騎士さまたちだ!
彼らもこちらに気がついたようで、「おっ」と寝ぼけ眼を瞠らせた。
「昨日の子じゃん!」
「悪女……じゃなかった、名前はえっと……」
「まりあちゃん!」
「そう、まりあちゃん! おはよう!」
「今日もかわいーね!」
「おまっ、さらっと抜け駆けを……!」
「今日も俺ら騎士が、姫を守ってやっからな~!」
「自分で騎士て。それを言うなら、騎士より親衛隊じゃね?」
「たしかに!」
一斉に言われてうまく聞き取れなかったけど、みんな元気がいいなあ。
こころなしか、昨日会ったときよりも顔つきが爽やかで、勇ましくなってる。本物の騎士みたい。