マリアの心臓
お兄さん
『“あたし”は、今も好きだよ!』
言っちゃった。
好き、って。
彼女の想いを、言葉を、借りて伝えた2文字。
あのときは無我夢中だったけど、我に返ったとき、一気に力が抜けて大変だった。
あれなら1週間経っても、ドキドキして、余韻が消えない。
ずっと伝え続けた彼女は、すごいな。かっこいいな。
アタシのハートも、強くなれるかな。
「ずっと好きだったの」
ドキィーッ!!!
す、す、好き!?
放課後、中庭前をちょうど通りかかったときだ。
発作を起こしたかと思ったほど、心臓がとんでもなく反応してしまった。
び、びっくりした……。
今はその2文字に弱いのよ……。
いったいどなたが……!?
興味にぼろ負けし、声のしたほうへ目を向ける。
窓ガラス越しに人影が見える。
「わたしじゃカノジョになれない?」
オレンジに染まる中庭の大木のそば。
両頬までも焼いて、焦がれた、乙女のお顔。
照れ隠しにくるくると髪をいじる指は、ぴかぴかネイルでコーティングされ、手入れが行き届いている。
あぁ……まさに!
入院中、何度も読み返した少女漫画のヒロインそのもの!