マリアの心臓
「実はね、わたし……待ってたの」
「え?」
「別れてほしいなあって、ずっと思ってた。別れたら一番に告るって決めてたから」
かわいらしい乙女の顔が、大胆不敵な狩人へと変貌する。
ぞくっとした。
優木まりあと似て非なる芯の強さを感じる。
迫力も相まって、すごく凛々しくて、かっこいい。
「センパイもけっこうワルっすね」
「お似合いじゃない?」
「かもな」
「返事は今じゃなくてもいいから、前向きに考えてよ」
「……ん」
「じゃ、わたし先いくね。大好きよ、未来のカレシ候補くん」
「うっ……ん、……気ぃつけて」
「うん。また明日ね」
好きってなんだろう。
恋人ってなんだろう。
どれだけ届けても、触れ合っても、明日はどうなるのかわからないなんて。
まるで。
ヒトの寿命と、似ているね。
「はああ〜……やべえ、どうっすかなあ……」
ひとりになったとたん、ウノくんは頭を抱えてうずくまった。
わしゃわしゃと髪をかき乱す。
顔に髪がかかっているせいだろうか。
少し、ピンク味が伝染して……?
「ああもうっ! なんでおれってこう……ぅおぉっと!?」
動揺が限界を超え、バランスが崩れる。
後頭部が壁に激突してしまう。
痛そうな音が響いて、とっさに、
「う、ウノくん大丈夫!?」
窓を、開けてしまった。