マリアの心臓


ガハハ!
と、外から煽り立てるように、愉快な声が噴いた。

泥棒だというお兄さんがたが、神亀……エイちゃんたちを待ちかまえているんだろう。


人質がいる安心感からか、勝ったも同然だと言わんばかりの賑やかしに、彼女の顔色はみるみる青白くなっていく。ただただ非力さを悔いるしかできない。




「バカですよね、わたし……」




クールでたくましそうだけれど、こう見えてまだ中学生。アタシよりも年下なんだ。

優位に立ってようがいまいが、怖いに決まってる。


なぐさめてあげたくても手足が縛られているせいで、背中をさすったり頭を撫でてたりしてあげられない。


唯一自由な頭を、彼女の華奢な肩に乗せ、ぐりぐりとこすりつけた。

彼女はくすぐったそうに身をよじる。

少し笑ってくれてほっとした。




「ごめんなさい、あなたまで巻き込んでしまって」

「ううん、昼休みのときよりはつらくないから平気」

「……は、波乱万丈な生活を送ってらっしゃるんですね?」

「そうかな?」

「今以上のイレギュラー、そうそうないですよふつう……」




そうかな。…………そう、かな??


アタシが優木まりあになってからの日々は、毎日ちがうことが起きて、ちがう気持ちを抱いて、ちがう人生を歩んでる。

本物の映画のように劇が始まることもあるし、恋愛絡みのいざこざに巻き込まれることもある。


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