マリアの心臓



でも。でもさ。

どうしてもアタシは期待しちゃうんだ。




「もし、その全部だったら、鈴子さんのほうが困っちゃうね」

「全部?」

「使命感もあるし、家族も助けたい。けど、そんなこと関係なく、あなた自身が傷ついていなきゃいいって、願ってるかもしれないじゃない?」

「……そ、れは……困ります」

「ね。困っちゃうよね」




愛と言っても、いろんな愛がある。

ひとつとは限らない。


だから、アタシは。


その可能性を、信じられた。




「どうしてあなたがうれしそうなんですか」

「えへ。そうだったらすてきだなあと思って」




こんな状況だというのに口角をへらへら上げるアタシを、彼女は心底ふしぎがる。




「あなた、いつもこうなんですか?」

「こうって?」

「楽観的というか、楽しそうというか……」

「だって、助けてくれるから」

「え? 誰が……」




アタシ、知ってるんだ。




「たぶん、もう、動いてるはずだよ」




アタシたちには最強の味方がついてること。



――ブオオオン!!

――ドコッ! ガッ!



それは突如、起こった。


地から吠える、バイクのエンジン音。

コンクリートをも飛び越える、過激な振動。



恐怖心を逆撫でしていた賑やかしが、あっという間に悲痛な叫びへと成り果てる。




「うぐぁ!? や、やめ……!」

「始めたのはそっちだろ?」


「お、俺らには人質が……ぁあ゛!?」

「倉庫行けるもんなら行ってみろや!」




……ほら、ね?


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