マリアの心臓
誰しも、きっと、心のどこかに“一番”を飼っている。
それでも、特別に思う気持ちに、大きさや形のちがいはあれど、温もりはすべて変わらない。
宝箱に大事に大事にしまいこむように、ぎゅっと抱きしめて、伝えてしまおう。
「バカな鈴子。もっとボクの愛を信じてよ」
「うん……っ!」
涙に負けて声をかすめているのは鈴子さんのほうなのに、なぜだろう。
不安にさせてごめん、ありがとう、と紡ぐ、低い声音のほうが、一瞬にして溶けていく。
「……うれしかったよ。鈴子が何か企んでたのは知ってたけど、こんなにボクのこと想ってくれてたなんてさ」
「……うるさい」
「だけどこれ以上、危ないことするんじゃないぞ? 鈴子の声にノイズが混ざり出して焦ったんだから」
「ノイズ?」
「こっちの話」
笑ってごまかしながら、拘束の痕のついた彼女の腕をやさしく握り、前髪のへばりつくおでこを触れさせた。
「鈴子が無事でよかった」
「……ん。まりあさんのおかげ」
「まりあ……? ……ああ、きみ、いたんだ」
あ、やっとアタシに気づいてくれた。
完全に、今、背景の一部と化してたよ。
特等席でハートフルなシーンを拝見しちゃって、心の中で大号泣でした。ごちそうさまです。