マリアの心臓
ずっと……ずっと、生きた心地がしない。
「あ、衛……! 突然優木が……!!」
「おそらく熱だ」
「……え?」
まりあに近づき、ためらいがちに抱きかかえる。
あまりの軽さに、また、心臓が嘆いた。
「熱、ですか……? でも、そんなふうにはとても……」
「こいつに“ふつう”は通用しねえよ」
赤々と染まる頬。熱のこもる体温。
血色がよいとも判断できるけれど、ちがうんだ。
「最近は元気になったが、まだ不安定なことが多い。病み上がりも同然だ」
「そんな……っ」
「知らなかった……」
本来なら、頬は、うんと白く透きとおっていて。
熱がこみ上がるとしても、ほんのり温かくなるだけ。
これでもよくなったほうだ。
それが……今は、色も温度も、ひどい。
いつからこうだったんだろう。
いつから、耐えていたんだろう。
「まりあさん、元気になりますよね……?」
その問いに、すぐに肯定を示せる幸せを、オレだけが噛みしめられる。
「とりあえず、こいつをすぐに病院に連れて……」
「……ん、」
「っ……お、起きたのか?」
「……びょういん、は、いや……」
なんだ、ただの寝言か。
いや、頭は起きているものの、朦朧としているのかもしれない。
「……――ちゃん……」
「え……?」
「……こほっ、……」
今……いや、聞き間違い、か。
反応がなくなり、眠りについたのだと察する。
熱はあるが、病態はそこまで悪化してはいない。
あんなに必死に抵抗していたし、病院はやめておくか。
行きたくない気持ちも、わかる。
よく泣いていたもんな。
病院のベットで、苦しい苦しい、って。
「……こいつの家に、届けてくる」
昔からそう。
オレにできることは、ちっぽけだ。