マリアの心臓
何者



なつかしい声。

なつかしい感覚。


なつかしい、温もり。




――『ちゃんと伝わってる。想ってくれてること、だから傷をつくったこと……伝わってるから、愛したいと思うんだよ』




せいいっぱい伝えることしかできなかった。

さよならをする運命だった。



約束、したのにね。








毎朝、泣きながら目が覚める。


今日は特に目がぱんぱんに腫れている。

けど、体はすっかり軽い。



2日間苛まれた熱が、引いていた。


いろいろと疲れがたまり風邪を引いてしまったけれど、これでまた健康! 元気! パワー満タン!

両親の不安も軽減できる! やったあ!



一度病院に診に行かないかと頼まれたが、無理を言って断った。

なんとなく臆している自分がいた。

本物のアタシの行方と、向き合わなければいけない気がして。


得も言われぬ怖さがあった。




「アタシ、元気だよ! ほら! ね!?」

「まったく……しょうがないわね」

「次からちゃんと気をつけるんだぞ?」




熱烈なアピールに押し負け、両親は登校の許可を出してくれた。


たった2日寝込んだだけなのに、太陽の強い眼差しがやけにひさしぶりに感じた。

もう入院生活には戻れそうにないな。


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