マリアの心臓
「優木はさ、よく衛のことずっと好きでいられるな」
「え?」
しょぼんと項垂れたアタシの頭を数回撫でてくれる、女の子扱いの上手な手のひら。
それとは裏腹に、言葉の節々から素直な賞賛と同情がほのめいていた。
「どんだけ突き放されても、追いかけ続けてんじゃん?」
「う、うん……」
「苦しくねえのかな、って」
だんだん仲良くなって忘れていたけど、そういえばウノくんたちは、出会い頭から、この恋が終わることを望んでいたね。
ひとりの人間を一途に愛せることへの、賞賛。
終わってしまえば楽だろうに、という同情。
そして。
なぜそこまで、と疑問を抱くのは、当然といえば当然なのだろう。
ごめんね、アタシには、何の返答もできないけれど。
たぶん。
ぜったい。
苦しかったと思うよ。
だから、優木まりあ、あなたは――。
「つうか、なんで衛のこと好きになったんだ?」
「なんで……なんで、かあ……」
「きっかけっつうの? 許嫁だったのは知ってっけど……」
「い、許嫁のこと知ってるの!?」
「ああ。衛から聞き出した」
「聞き、出した……」
なんて物騒な言い回し……。
それをけろっと言い表せてしまえる彼は、いったい……って、そうだよね、不良さんだもんね。
「でも許嫁だから好きになったわけじゃねえんだろ?」
「……、うん」
好き、と自覚したのは。
好き、と言われたときだ。
そう、はじめは、エイちゃんのほうから、伝えてくれたんだ。