マリアの心臓



「ピリピリ……ははーん?」

「なるほどな〜?」




ふたりの眼もキランと光った。
アタシとはまったく別の意味で。




「かわいーヤツめ」

「妬くのは自由だからな。……ただ、叶えたくないだけで」




焼く? お昼ご飯の話?





「あいつを解放してあげないきみは、天然小悪魔か何かかな?」

「いいえ、人間です」

「マジレスしてやんなって」

「しかも、健康な!」

「その付け足しも要らん!」




へへんっと胸を張ると、ふたりして呆れ顔になる。けれど、こころなしかおだやかに感じる。




「熱、下がったんだね。おめでとー」

「あ、ありがとう」

「この2日間、鈴子がずっと不安がってたよ。まりあさんまりあさん〜って。今度会って、安心させたげてよ」

「……会わせたくねえツラしてんぞ、シスコン」

「ええ、今ボクどんな顔?」

「気難しい、ピリピリした顔」

「……うっわ、まじ? ボクまで?」

「無自覚? おまえのほうが無自覚な悪魔化?」




とぼけたような表情をして、ウノくんで遊んでいる。

あるいは本当に、心当たりがなさそうにも見え、ウノくんもツッコミしづらい。




「ま、日直がんばって」




簡単に作りこまれた笑顔で、プリントの最後の一枚を手渡される。


なんか……なんというか……。
いつもより熱視線というか……目力が強いというか……。


おずおずと受け取ったその紙は、わずかにくしゃりとよれていた。


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