マリアの心臓
泣き虫な少年
放課後。
日誌を届けがてら、中庭に立ち寄った。
「あ、やっと来た」
「わりぃ、待った?」
「待ってるのも楽しかったから、いーよ。許す」
大木に寄りかかっていたのは、おれの待ち人。
この前告白してくれた、センパイだ。
「日直はいいの?」
「え、日直のことまで知ってんの?」
「鈴夏くんから聞いたの」
「あ、そっか。同じクラスだっけ」
「そーだよ。呼び出しだって、鈴夏くん伝いでしてきたじゃん」
そうだ、そうだった。
昼休みはいろいろあって、頭から抜けてたや。
おれから呼び出したんだ。
昼休みが終わるぎりぎりに、放課後にここに来るように、鈴夏に伝言を頼んで。
「突然呼び出されてびっくりしたよ。どうしたの?」
「わかってんだろ?」
「ふふ、うん。聞いてみただけ。告白の返事だよね?」
「ああ」
今までで一番といっても過言ではないほど悩んだ。
待たせすぎるのもいやで、そう焦るにつれ迷ってしまっていた。
だけど、やっと、答えを見つけた。
「前向きに考えてくれた?」
「……うん」
人間ってふしぎだ。
あんだけ元カノのことが好きで、泣きじゃくっていたのに。
今じゃすっかり他人の関係になじんでる。
別れてから、カノジョの本性を知り、ぞっとした。
今となっては、まったく未練がない。