heartbreak secret room 森村医師の2月14日は・・・?



『お~、まりん、オレにくれるの?』

「うん♪まりん、まーくんせんせいのこと、スキだもん。はい、コレ。」


彼女はかわいい花やハートがいっぱいプリントされている包装紙にくるまれた小さな箱をオレに差し出した。

それを受け取った時に感じた箱の中でズサズサと何かが擦れあうような感触。

手術を受けた手で頑張って何か作ってくれたんだなと
彼女の頑張りと優しさを感じ、なんか心がじ~んとした。


「まりんちゃん、この人のこと、好きなの?」


オレの感動の時間に水を差すような松浦クンの問いかけに対しても、

「うん♪まりんのゆび、なおしてくれたから~。まりんね~、おおきくなったら、ま~クンせんせいとけっこんしてあげてもいいの~」

まりんは小さな箱だけでなく、かわいい回答もオレにくれた。


こういう時も医者をやっていてよかったと思う瞬間
だから
食べかけの焼きソバパンを取り上げられた時も
障碍者手帳の医師意見書を書くのが遅れて、秘書にぶつぶつ言われる時も
仮眠し始めた間際に急患が来たと起こされ、緊急手術になった時も
整形外科医師として頑張ろうと思える自分がいる



『まりん~。お前はずっとそのままでいてくれよ~。』


こういう純粋な女の子が
そのまま大きくなってくれれば
オレはもっとモテるはずなのにな・・・・



「イヤだ・・・・あたし、はやくおおきくなって・・・しょうたクンともけっこんするもん。」

『なに~?!しょうたクンとも結婚するのか?オレは????』

「やっぱり・・・しょうたクンとけっこんする~。だってそうしないと・・・まりんのものにならないんだもん。」

『まりん・・・・お前、魔性の女になりそうだな・・・』



こんな甘酸っぱい想いもさせてもらえる2月14日。

オレはオレなりに今日という日を楽しんでいる。



「・・・森村。」


例え・・・そんな甘酸っぱい想いで胸がいっぱいになった後に戻った医局で自分のデスクチェアに腰掛けた瞬間、怒りに満ちた低い声が背中越しに聴こえてきたとしても。


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