heartbreak secret room 森村医師の2月14日は・・・?



『・・・・日詠サンがそんなことを言うなんて、明日は名古屋も大雪だな~。・・・・そうなるとまた骨折した怪我人続出して・・・オレはまた、焼きそばパンを食べる暇がなくなるぐらい忙しくなるだろ?』

そうやってどうでもいいことを口にしたりして。
でも、この時の日詠サンはそれに流されたりはしてくれなかった。


「誰もが皆、お前みたいなドクターに出逢えるわけじゃないからな・・・」

『またまた、そんな・・・』


いつもの・・・オレと絡む時に見せるどこか面倒臭そうな顔なんかじゃなく、至って真剣な顔でそんなことを言われると
なんか調子・・・狂う


「患者がいくらお前の手術を望んでいても、自宅が遠いなどの物理的な問題だけじゃなく・・・・専門外の医者が患者を抱え込むという人的な問題で出逢えないケースだってないわけじゃないから・・な。」

『・・・買い被りすぎだろ?オレのこと。』

「先天性疾患を有する赤ん坊を取り上げることもある俺だって、お前みたいな腕の利くドクターが同じ病院にいてくれることで、産科医師としてその赤ん坊や家族に“一緒に病気や障害と立ち向かおう”と伝える勇気を・・・持てるんだ。」


そう言いながら、日詠サンは手に持ったままの食べかけのまりんクッキーを再び齧(かじ)り始めた。
とても美味しそうに。



『へ~、それは初耳ですよ、日詠部長。やっぱり明日は大雪どころか暴風雪とかになりそうですねぇ。』

「そんなこと言ってないでお前も食えよ。いろんな想いが篭っているであろう大事なこのクッキーだ。」

ニヤリと笑って俺にクッキーを食べるように勧めた日詠サン。


学生時代のこの男
そこらじゅうの女の子を泣かせていたクセにその自覚全くナシで、天罰が下ればいいとまで思っていた相手だったこの男

レイナに出逢った頃はこんな男に絶対に彼女を譲れないと思ったのに


こんな懐の深い一面を見せ付けられたりすると
この男には、多分この先もやっぱり敵わない
・・・そう思わされずにはいられなかった。


『それじゃ、オレも・・・まりんクッキー、食いますか~』

摘んだままでいたまりん作のうざぎクッキーをオレも齧り始めたその時、

「あのっ・・・・・私も1つ、分けてもらえますか?」


デスクチェアに座っている俺らの頭上から聞こえてきた。
レイナではない女性の声が・・・・。



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