heartbreak secret room 森村医師の2月14日は・・・?



見上げるとそこには

『美咲ちゃん・・・じゃん。』

「どうも。お邪魔します。」

数年前、レイナの恋敵だった過去があり、日詠サンの後輩女性医師でもある産婦人科の美咲サンがこれまたバレンタイン仕様の箱を手にしながら立っていた。



『いいけど・・・・ソレをそっちのおっさんに渡しに来たんじゃないの?』

「えっと・・・今のまりんちゃんの話を小耳に挟んで、なんかイイ話だな~と思って・・・」


彼女は右手に持っていた箱を背中へ回し、それを隠してしまった。

どうやら、日詠サンに渡すチョコのことよりも
まりんのチョコクッキーのほうが気になったらしい。

まりんの頑張りに共感してくれるなら
喜んでそのクッキーを分けてあげたい

・・またそう思えたオレは美咲サンにもまりんのクッキーを1個だけ分けてあげた。


彼女のその姿を日詠サンは穏やかな表情で見つめていた。
まるで兄貴みたいな顔して。


彼のその表情から
美咲サンもオレと同様に日詠サンに対し、いまだに叶わない恋を抱いていると悟ったオレ。

せめて、日詠サンのデスク上にあるチョコの山に
彼女の手中にあるバレンタイン仕様の箱が埋もれてしまわないようにしてやりたいと思った。


『美咲ちゃん・・・・日詠サンにチョコ、渡しに来たんだろう?そろそろ出さないと、このおっさんに直接渡せずに、チョコの山に埋もれてしまうぞ。』


おっさん呼ばわりを連発したせいか
日詠サンは再び冷ややかな視線をオレに浴びせていた。

でも、オレはそれに気付いていないフリをして
美咲サンに早く渡せよと手でジェスチャーをしていると

「・・・あの・・・そうじゃないんです・・・」


美咲サンは頬を少し赤らめながらも下唇を噛んだ。



『そうじゃない・・・の?』

「・・・・・・・・・」


返事もできないくらい余計なことをして困らせてしまったか・・と反省し始めた時、


『美咲。俺、先に病棟、行っとく。ゆっくりでいいから、後で来いな。』


日詠サンは突然、椅子から立ち上がりさっさと医局を出て行ってしまった。



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