heartbreak secret room 森村医師の2月14日は・・・?
『うお~、思ったよりサクサクして・・・うんまい!!!!!』
パクッ、パクッ、パクッ!!!!
『ヤバイ、コレ、美味いわ。でもさすがにもう1個食ったらバレるよな~。箱の大きさからしても。』
後ろ髪を引かれながら蓋を閉じ、それをハンカチで包み、ちゃんと蝶々結びをしてから、何事もなかったかのように真後ろにある日詠サンのデスクにそれを戻した。
誰かに目撃されていないかと再び辺りを見回すが、医局に人の影ナシ。
『さ~てと、病棟で抜糸でもしてくるかなぁ。あと、リハビリスタッフの松浦クンにも呼ばれていたっけ?何時だっけな~。』
オレは口の中に広がる甘いチョコ味とメロンパン独特のじゃりじゃり感を堪能しながら気分よく整形外科病棟へ向かった。
「森村ぶちょお、」
『おっ、何?』
「義理で~す♪」
整形外科病棟ナースステーションにて若手看護師有志から、駄菓子屋で人気のチョコバー30本入りの箱を目の前に差し出された。
『義理か~・・・・でもありがたく頂こうかな』
そう言いながら両手を思いっきり前に出したのに
「ちゃんと処置が全部終わってからです~」
その両手は空を切った。
『えっ、なんで?』
「だって森村先生、すぐに食べ始めるでしょ?」
『だって頂いたものはすぐに頂くのが礼儀でしょ?』
「勤務中です。処置、行きますよ。ただでさえ、遅れてますから。部長なんですからちゃんとして下さい。」
『・・・・ハイ、承知致しました。』
空を切ったままだった両手は処置カートへ行き先変更。
こういう時は素直にその指示に従うのが利口だから。
これも長年、ここで勤務して培ってきた知恵ってもんだ。