春色溺愛婚 〜歳上御曹司の溺愛で陰険お嬢様は乙女に変わる〜
「随分ハッキリ否定されるんですね、私はそんなに梓乃さんの好みではないですか?」
意外な事を言われて、私の方が返事に困ってしまう。少なくとも会ってから今まで一輝さんを自分の好みかそうでないかなんて考えもしなかった。
ただ思ったよりもずっと若々しく、とてもオジサンだなんて言えるような人ではなかった。それだけで頭がいっぱいで……
「ええと好み、とかそういう事ではなくて。私が言いたいのは一輝さんにとってこの結婚が……」
こんな聞かれ方をした後にこの縁談になんのメリットがあるのか、どんな目的があるのかなんて言ってもいいの? いくらなんでも失礼になるのではないか、そう考えると続きが出てこない。
なのに、一輝さんはそんな私の思考を読んだかのように……
「梓乃さんが気になるのはこの結婚が私にどんなメリットがあるのか、目的は何なのかということでしょう?」
「どうして、それを……?」
やはり穏やかな雰囲気を持ちながらもこの人は油断ならない、私が考えている事なんて何でもお見通しのように。きっと……この一輝さんの笑顔に騙されてはいけないんだわ。
「梓乃さんは賢い女性だと聞いています、この結婚を単純に喜ぶ貴女の父親とは違う。そうなんでしょう?」
「それじゃあ、やっぱり……」