春色溺愛婚 〜歳上御曹司の溺愛で陰険お嬢様は乙女に変わる〜
「私が梓乃さんを選んだのにはちゃんと理由があります、そこにはメリットもデメリットも……そして貴女には話せないような目的も」
真っ直ぐに私を見る瞳は多分嘘はついていない、というかここまで話してしまえば取り繕う必要も無いんでしょうね。あまりにあっさりと本当の結婚理由を言われて逆に肩透かしを食らった気分だった。
それでも、これが一輝さんなりの私への誠意の見せ方なのかもしれない。
「随分簡単に教えてくれるんですね、それで私がこの結婚に了承するとでも思っていらっしゃるんですか?」
愛や恋を求めてきたわけじゃない、それでもここまでハッキリとメリットだとか目的なんて話されると腹も立ってくる。
私は物じゃないのよ。あのくそジジイも一輝さんも私の意志などどうでもいいんだと思ってるように感じて、苛立ちを隠す気にもなれなかった。
「……梓乃さんは私との結婚は嫌なんですか?」
「その言い方だと随分自信がおありのようですね、私にも好みくらいはあるんですよ?」
そう嫌味な言葉で返せば、一輝さんは困ったように額に手をあてて考えるような仕草をして見せる。そんな事したって、無駄なのに。そう思っていると……
「この縁談は私だけにメリットがあるわけではなく、梓乃さんにも良い意味があるんです。それを知らずに断ってもいいんですか?」