春色溺愛婚 〜歳上御曹司の溺愛で陰険お嬢様は乙女に変わる〜


「私は梓乃(しの)さんに多くを望むつもりはありません。ただ妻として私の傍で暮らし、そのように振舞ってくれてくれているだけでいい。私の目的が果たされるまで……」

 よほど大きな目的があるのだろうか? 高宮(たかみや)の御曹司である彼が簡単に出来ないくらいの想像もつかないそうな目的が。それでも一輝(いつき)さんが提示してくれる条件は決して悪いものではないと分かる。
 これから先、他の縁談があったとしても私をただの人形程度に扱うような男だって出てくる可能性がある。それならば……

「本当に妻として傍にいて、貴方に恥をかかせないような振る舞いをする。それだけでいいんですよね?」

「ええ、そうです。この縁談を受けてくれるのならば……私に出来る限り、梓乃さんには苦労の無い生活を約束します」

 一輝さんの言葉に嘘はないと思う、きっと私がこの人と結婚すれば、周りから見れば仲の良い夫婦として暮らしていけるだろう。そこに特別な感情など必要もない、だから……

「それならば、私達……契約結婚でいいですよね?」

「契約結婚、ですか?」

 一輝さんが少し驚いたような顔で私を見つめる、予想もしない事を言われたと言うように。それでも私はここでこの提案を止める気はなかった。
 苦労はなくても、この結婚では私の望むものは得られないような気がしたから。

「ええ、契約結婚です。一輝さんの目的が果たされるまで私は貴方の自慢の妻であるように努力します。その間は高宮と二階堂(にかいどう)の家は円満な関係を望みます。そしてその目的が果たされた時、私との婚姻関係を終了させてください」

「……離婚して欲しい、ということですか?」


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