春色溺愛婚 〜歳上御曹司の溺愛で陰険お嬢様は乙女に変わる〜
「本当に覚悟を決めてこの結婚を受ける、そういう事なんですね？」
「そう思ってもらってもいいです。一輝さんにとってこの結婚が目的を果たすためのものならば、私も自分の目的のために利用させてもらう。それで問題ないと思いませんか？」
私と一輝さんの利害が一致しているのなら、私にとってもこの結婚は意味のあるものになる。もし二階堂の父の気が変わって私を連れ戻そうとしても、彼なら私の味方をしてくれるかもしれない。そんな打算もあった。
姉の千夏ならば、この結婚を受けた場合相手に愛される努力をするのかもしれない。でも私はそうではなく、利用されるのならしかえしてやる。そう考えるような人間だから。
「あくまでこの結婚はお互いの目的を達成させるためだけのもの、それで梓乃さんはいいんですか？」
「ええ、構いません。目的がはっきりしていた方が協力しやすくて良いですから」
そこに恋なんて無いから、どれだけ私と一輝さんが打算だらけでも構わない。心揺さぶられない関係の方がすっきりしてて気持ちがいい。
真っ直ぐに私を見つめ、それが本心なのかと探ってくるような一輝さんの視線。私はそれから目を逸らすことなく、応えてみせた。
「分かりました、では私と梓乃さんは目的が達成されるまでの契約関係。そういう事でお願いします」
「ありがとうございます、私達いい夫婦になれそうですね」
そう言って微笑んで見せれば、一輝さんもふわりと笑ってくれた。そうね、この人となら悪くない結婚生活が送れるかもしれないわ。この時はそう思って、これから始まる結婚生活を簡単に考えていた。
