春色溺愛婚 〜歳上御曹司の溺愛で陰険お嬢様は乙女に変わる〜
「そうですね、外側だけ綺麗に取り繕うような女性は生涯のパートナーには選べないのかもしれませんね。誰の事とは言いませんけれど」
「な、なんですって! 梓乃の癖に生意気な事をっ……!」
普段はこんな風に相手を怒らせるような事はしない、だけど私だけでなく先に嫁いだ姉やその相手まで馬鹿にしたような言い方がやけに癇に障った。
父や兄に甘えて何の努力もせずに、我儘放題で好き勝手なことを言うこの姉の言葉が。
きっとこの人は御曹司という立場にある男性ならば誰でも良くて、綺麗な自分を愛して幸せにしてくれる。そんな風にでも思っているのでしょうね。
もう一人の姉や私は契約結婚という形で結ばれ、この先も愛されるという保証はない。そんな覚悟もきっとこの百々菜にはあるわけもない。
そんな甘えた考えが今の私にはとても腹立たしく感じたのだ。
「幸せにしてもらう事しか考えてないお姉様と結ばれる相手の方が、本当にお気の毒ですね。それじゃあ、私は色々準備があって忙しいので失礼します」
言いたいことを一方的に言ってさっさと自室に戻ろうとするが、激怒した姉に肩を掴まれ手高く上げた手を振り下ろされてしまう。
バチン‼ かなりいい音がして、その手は私の頬に当たる。頬がジンジンと痛んでいるがここでメソメソしては負けだと思い、戸惑う百々菜を笑顔で見つめ返した。
もちろん目は笑っていない、鋭いくらいの視線で彼女を見据えてやった。