春色溺愛婚 〜歳上御曹司の溺愛で陰険お嬢様は乙女に変わる〜
「あ、アンタが悪いのよ? 姉に対してそんな態度を取るから、お父様に言いつけて叱ってもらうんだから!」
無茶苦茶な言い分にこっちの方が呆れてしまう。我儘な子供以下だと思って我慢していたが、まさかこんな姉妹喧嘩の尻拭いまで父親にしてもらおうっていうの?
本当に馬鹿馬鹿しくて相手にしていられない、私はそんな姉を無視してさっさと部屋に戻る事にした。
近くにいた使用人に声を掛けて、部屋に保冷剤を持って来るように言いつけた。冷やさなければ腫れてしまうかもしれない、それは流石に困ると思って。
部屋に戻ると机の上に置いたままになっていたスマホの画面に新しいメッセージが出ている。誰かと思って画面をタップするとその送り主は一輝さんだった。
『今日はありがとうございました。また近いうちにお会いしたいのですが、都合に良い日を教えて頂けますか?』
わざわざ会って話さなければならないような用でもあるのかしら? 今日言いたいことは全て伝えたつもりだったので、次に会うのは結婚に向けての話し合いになると思っていたのに。
二人きりで会う事に少し戸惑いを感じながらも、私は自分の都合の良い日を調べて一輝さんに返事を送る。
彼からの返事が来るのを何となくそわそわして持っていると、スマホの画面にメッセージが届く。
『では、その日に迎えに行きます』
とだけ、それだけなのに何となくふわっとした気持ちになって。私はそのメッセージをしばらくの間見つめていた。