春色溺愛婚 〜歳上御曹司の溺愛で陰険お嬢様は乙女に変わる〜
契約結婚で、いいですよね?
「……は? 私に何が来てるとおっしゃいましたか、お父様」
良く晴れた日の午後、珍しく私を自室に呼び出した父の顔を真っ直ぐに見つめてそう言った。心の中では「何を言い出してんだ、この耄碌ジジイ」という本音でいっぱいだったのだが。
私にそんな事を思わせたのは、いつもよりスッキリとした笑顔の父から出た一言だったわけなのだが……どうやらそれは本人には少しも伝わって無いらしく。
「だから、お前の結婚相手が決まったと言っているんだ。喜びなさい、相手はあのタカミヤホールディングス社長子息の高宮 一輝君だ」
ああ、分かった。私は今、白昼夢でも見ているに違いない。確かに父は強引で自分勝手な人間だったが、まさか娘の結婚も勝手に決めてくるようになったとは思いたくなかった。
たとえそれがどれだけいい話だったとしても、だ。
「喜んでいるところに水を差す様で申し訳ないのですがお父様、高宮 一輝様と言えばもの凄く理想が高く並大抵の女性では相手にもされないと有名な方です。そんな方が私を結婚相手に選ぶとは思えないのですが……?」
建前ではそう言ってみせるが本音は違う、タカミヤホールディングスの御曹司と言えば女性嫌いで有名でもう四十路近いオジサンのはず。そんな縁談冗談でもお断りだとこの時は本気で思っていた。
「そうでもないぞ、この話は一輝たっての希望だと聞いている。見る目がある男性じゃないか、お前にこんないい話が来るなんてな!」