春色溺愛婚 〜歳上御曹司の溺愛で陰険お嬢様は乙女に変わる〜
「いいえ、そういう所が可愛いと言ってるんです。今までお付き合いしてきた女性の方たちは、私の前では少食になる人たちばかりだったので」
可愛いという言葉に一瞬だけドキッとしたが、その後に続いた台詞に何となく気持ちが苛立った。
もちろん一輝さんの年齢で今まで交際したことがないとは思わない、それでも何となくその数の多さを感じて嫌な気分になったような気がした。
……女性の扱いには慣れているとでも言いたいのかしら? 優しい雰囲気だから安心してたのに、やっぱり噂通りの人なのかも。
「そうですか、物珍し気に見られるのはなれてます。よく大食いだとか底なしとかも言われるので」
食に対する執着が凄い私は、子供の頃に男子から揶揄われることも少なくなかった。今では外ではなるべく抑えているつもりだったが、一輝さんにはバレてしまったのでしょうね。
人のことを良く見ているのが分かる、やっぱり見た目ほどポヤポヤした人じゃないわ。
「異性にどう見られるかばかりを気にする女性より、ありのままでいる梓乃さんの方が私には魅力的に映るんですけれどね」
「……そうですか」
一輝さんは天然なのだろうか、それとも策士? こんな言葉で私を揺さぶろうとしてるのかと警戒心が強くなる。そんな私を困ったように見つめた後、一輝さんは視線を前へと戻したのだった。