春色溺愛婚 〜歳上御曹司の溺愛で陰険お嬢様は乙女に変わる〜

　まず運ばれてきたのはチーズと卵のイタリアンスープ、とろりとしていてまろやかなコンソメ味でとても美味しかった。ルッコラとトマトのサラダもドレッシングが私好みであっという間に食べ終わってしまう。
　そんな私の様子を一輝さんはニコニコと見ている、ちょっと見過ぎなんじゃないかってくらいに。

「あの、私ではなくご自分のお皿を見られてはどうですか？　そんなにジッと見られていると食べにくいのですが……」

　すると一輝(いつき)さんは少し驚いた顔をした後、口元を押さえて俯いてしまった。どうしたのかと思って声をかけようとすると、彼の肩が小さく震えている事に気が付いた。
　……もしかして、この人笑ってる？

「何が、そんなにおかしいんですか？」

「だって、梓乃(しの)さんは私の視線に気付かないほど夢中になって食べてたのに……急にそんな事を言うから、ふふ」

　いくら何でもそこまで食い意地は張って無いはずだけど、食べている時はそっちに集中したい。それが美味しいものならなおさら。
　一輝さんは私が美味しそうに食べるのが良いと言いながら、そうやって揶揄うつもりなのかしら？　彼の笑みからはその中までは見えてこない。

「本日のメイン、コトレッタです」

　だがそんな事は目の前に置かれたお皿を見ただけですぐにどこかへと吹き飛んでしまった。