春色溺愛婚 〜歳上御曹司の溺愛で陰険お嬢様は乙女に変わる〜


 コトレッタ、子牛の肉を叩いて薄く伸ばし小麦粉と溶き卵そしてパン粉を付けてオリーブオイルで上げた料理。ミラノ風カツレツなんて呼ばれたりもして、日本のカツレツのルーツや語源になったとも言われてる。
 肉料理も好きな私は、一輝(いつき)さんの視線をこれ以上気にしないで食べることに集中することにした。せっかくの美味しい料理を味わって食べないなんて勿体ないもの。

 一口、もう一口と止まらなくなりあっという間に食べ終えてしまう。顔を上げると一輝さんがまた私を見つめていたが、彼のお皿の中のコトレッタは綺麗に食べ終えられている。
 
「それじゃあ、デザートを頼みましょうか」

 一輝さんがウエイターに声をかけると、奥からいくつものデザートの乗ったワゴンが運ばれてくる。定番のティラミスやパンナコッタ、何種類ものジェラートにカンノーリ。そしていま人気のマリトッツオも。
 甘い物に目がない私は、一輝さんに気付かれないようにゴクリと唾を飲み込んだ。どれも美味しそうで、この中から三つを選べるかしら?

梓乃(しの)さんはどれにしますか?」

 ウエイターからの説明を聞いた後、一輝さんからそう聞かれもう一度デザートの方をじっくり見て考える。迷いに迷って選んだのこの三つ。

「ええと、そうですね。ベリーのジェラートとマリトッツオ、それにバーチ・ディ・ダーマをお願いします」

 他のデザートもかなり魅力的だけど、今は我慢。次は一人でデザートバイキングを狙ってくるのもありかもしれない。なんて考えていると……

「それでは私はマロングラッセ、ティラミスそしてアマレッティを」

 一輝さんが選んだのは、私がどうしようかと悩んだデザートばかり。私達、意外と好みが似てるのかしら?


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