春色溺愛婚 〜歳上御曹司の溺愛で陰険お嬢様は乙女に変わる〜
「では、ごゆっくり」
デザートの乗ったワゴンを持ってウエイターはテーブルから離れていく。私と一輝さんの前にはデザートの乗ったお皿が置かれ、早く味わいたくてワクワクしていると……
「良かったらこれもどうぞ、私は甘い物は少し控えてるので」
「……え?」
一輝さんはそう言って私にデザートの乗ったお皿を差し出してくる。確かに私が気になっていたデザートが乗っているけれど、いったいどうして?
キョトンとした顔で一輝さんを見ると、彼は少し困った顔をして微笑んで見せる。
「梓乃さんが気にしていたのを選んだつもりですが、違いましたか?」
「あ、いいえ。合ってますけど、でも……」
見ただけでそんなことが分かるなんて、私はそんなに食い意地が張っているような目で食べ物を見てしまっているのだろうか? そう思うと流石に恥ずかしくて、顔があげられなくなる。
良家で育てられててきて、その辺はキチンと出来ているつもりだったのにそうじゃなかったなんて。
「違いますよ、梓乃さん」
「……何がですか」
一輝さんが何を言いたいのかが分からず、少し拗ねたような声で返事をしてしまう。こんなの全然私らしくないって分かってるのに。
「こうやって梓乃さんの事が分かるのは、私が貴女の事をそれだけじっと見てるからです」