春色溺愛婚 〜歳上御曹司の溺愛で陰険お嬢様は乙女に変わる〜
一輝さんの言葉にギョッとして顔を上げる、まさかジッと見ているってそんなはずは……だけどすぐに一輝さんと目が合って思わず目を逸らしてしまった。
だって、本当にこっちを真剣な目で見ているのだから。
なんなの? 私を揶揄って遊んでいるのか、一輝さんの真意が少しも見えてこない。何を伝えたくてそんな事をわざわざ教えてくるのか、私には分からなかった。
「変な事を言うのは止めてもらえますか? せっかくのデザートの味が分からなくなるのは嫌なので」
不機嫌さを隠さずにそう言えば、一輝さんは申し訳なさそうな顔をするだけ。いつもなら気にならない事のはずなのに、それが妙に胸の奥をチクチクと刺しているようで気になった。
もちろんそんな心の変化は欠片も出さず、私はデザートのお皿を受け取ったのだけど。
「……美味しい」
ベリーのジェラートを口に運ぶと、思わず口から零れた言葉。それをしっかりと一輝さんに聞かれたようで、彼は嬉しそうな顔をしている。
なんだかやりにくい人ね、こんなにコロコロ表情を変えられては私の方が妙な気分になってくるし。
「良かった、そっちのも美味しいので食べてください」
そう言って一輝さんは彼が選んだデザートのお皿のマロングラッセを指す。確かにそれも美味しそうだけど、でも……
「一輝さんがお好きなら、ご自分で食べればいいのでは?」