春色溺愛婚 〜歳上御曹司の溺愛で陰険お嬢様は乙女に変わる〜
確かに甘い物を控えていると彼は言った、だがマロングラッセを一つ食べるくらいなら問題ないのではと思っての言葉だったのだけど。
キョトンとした表情を見せた後、一輝さんは口元を手で押さえて肩を震わせた。
「なぜ、笑うんですか? 私は面白いことは言ってませんよね」
わざわざ確認しなくたって分かる、どう見ても一輝さんはさっきの私の言葉で笑っているのだから。だけどその理由が分からない、それが何となく面白くない。
「デザートが好きな梓乃さんに選んだつもりなのに、好きなら自分で食べれば言われるとは思ってなかったので。そういう所が梓乃さんらしいなって」
私らしい? たった二回会っただけの一輝さんに私の事がそれほど分かるとは思えないのだけど。ただ私は一輝さんがマロングラッセを美味しいと思うなら、自分で食べるのが良いんじゃないかと思っただけ。
それなのに……
「私が美味しいと思ったから、梓乃さんにも食べて欲しいんです。つまり、そういう事ですよ」
そういう事がどういう事なのか、私にはよく分からない。でも一輝さんがとても優しい笑顔で私を見つめてくるから「そうですか」としか答えることが出来なくて。
一輝さんの言う通りこのお店のマロングラッセはとても美味しくて、また食べに来たいと思った。