春色溺愛婚 〜歳上御曹司の溺愛で陰険お嬢様は乙女に変わる〜


「もう少し二人で話をしても大丈夫でしょうか?」

 イタリアンのお店を出て車に戻ると、一輝(いつき)さんが腕時計で時間を確認しながらそう聞いてくる。まだ昼を過ぎたばかり、そこまで気にしなくてもいいのにと思うが一輝さんはそういう性格なんでしょうね。
 それに彼の言う話の内容も気になって、私はすぐに頷いて見せた。

「大丈夫です、私はそこまで心配されるほど子供ではありませんし」

 どちらかといえば小柄で童顔な私。もしかして子供扱いしてるのかと思い、少し嫌味な言い方で返事をしてしまう。もちろんそんな訳ないと笑顔で返されてしまうのだけど。

「私にとって梓乃(しの)さんは女性ですよ、子供だなんて思う相手に結婚の申し込みなんて出来ませんから」

「……ならいいんですけど」

 妙にその言葉に重みを感じたのは気の所為かしら? その言い方だと、まるで……いいえ、そんなこと私が知る必要は無い事だとすぐに思いなおした。
 しばらく車を走らせて、連れて来られたのは展望台のある広い公園だった。運転手を車に残して私たちは展望台へと向かう。

「高い所は大丈夫ですか?」

「ええ、どちらかといえば好きな方です」

 遠くを見渡せる、そういう意味で高い所は昔から好きだった。籠の中の鳥のような生活にどこかうんざりしていて、いつかは抜け出したい。
 そんな叶わなそうな未来を想像して、眺めていた。


< 28 / 42 >

この作品をシェア

pagetop