春色溺愛婚 〜歳上御曹司の溺愛で陰険お嬢様は乙女に変わる〜
「…………」
一輝さんはそんな私の言葉に何も言わない。呆れているのか、それともこんな考え方しか出来ない私を可哀想だと思うのか。知る必要は無いとそれ以上は考えない事にした。
「もうここで降ろしてもらって良いですよ、駅も近いので買い物をして帰りたいですし」
「……ですが梓乃さんに何かあっては私も困ります」
気を使ってくれるのは嬉しいが、今一輝さんと一緒に居るのは何となく苦しい。結婚する相手だとしてもこの人に弱みを見せられない、そんな状況のせいか上手く息が出来ない気がして。
なかなか首を縦に振らない一輝さんを説得して、私は駅の傍のロータリーで一人で降ろしてもらった。
「また、メッセージを送りますので……」
「はい、待ってます。それじゃ、今日はありがとうございました」
いつまでも車に戻らない一輝さん、仕方ないので私が彼に背を向けて駅の地下街に向かって歩き出した。彼から見えない位置まで移動し、バッグの中のスマホを取り出しでディスプレイをタップし操作する。
メッセージを開けばお節介な異母姉のから数件のコメントが入っている、彼女は私の味方なのだとホッとしながら「大丈夫」とだけ返事を送っておいた。
そのまま地下街の喫茶店で一時間ほど時間を潰すと、駅に戻りタクシーを拾って二階堂の屋敷へと帰った。