春色溺愛婚 〜歳上御曹司の溺愛で陰険お嬢様は乙女に変わる〜
「えええ? 嘘……」
すぐに送信取り消しをするつもりだったのに、それよりも一輝さんがメッセージを確認する方が早かった。ちょうど彼もスマホを確認していたのかもしれない、なんて運の悪い……
普段出ないような情けない声を上げて、スマホをベッドに投げ捨てた。いま一輝さんがこの文章を読んで何を思っているのかと考えただけで落ち着かなくなる。
無視して欲しいと思うと同時に、返事がなければ落ち込んでしまうかもしれない。そんな矛盾した気持ちを抱えてその場から動けずにいたのだけど。
【ピロリン、ピロリン】
メッセージの受信を知らせる音楽が鳴ったと同時にスマホに手を伸ばしていた。すぐに画面をタップしてメッセージの内容を確認する。
『もちろん喜んでお付き合いします。正直、今日のデートで梓乃さんに嫌われたのかと不安だったので良かったです』
一輝さんの意外な言葉、呆れられたのは自分の方だと思ってたのに彼がそう考えていたなんて。私の一方的な感情で一輝さんに冷たい態度を取ってしまったのに、彼は全く怒ってもいない。
それどころか、私からの連絡を待っていたかのように喜んでくれているみたいに思えて。
「嫌いになんてなりませんよ」
……気付いたら、そう送ってしまっていた。